として要介達と一緒に、そうした旅へ出て行ったら、無聊に苦しんでいる自分にとっては、面白かろうとそう思い、浪之助は一緒に行くことにした。
旅へ出ると何と要介は、すぐこの地へやって来て、林蔵方へ止宿してしまった。
が、何か画策しているらしく、一人でブラリと家を出て、二三日帰って来ないかと思えば、源女を連れて出かけて行って、やはり二日でも三日でも、帰って来ないようなことがあった。
林蔵の家へ来てからの浪之助は、決して退屈しなかった。博徒、侠客、貸元などと呼ばれる、この人間の社会生活が、珍らしく痛快であるからであった。義理人情を旨として、行《や》ることといえば博奕であり、それで生活を立てている。勢力争い――縄張争い、こいつがコジレルと血の雨を降らす。親分乾児の関係が、武士の君臣関係より、もっと厳重で頼母《たのも》しい。巧言令色、追従などという、そういういやらしい[#「いやらしい」に傍点]ことが行なわれず、生一本で正直だ。
これが浪之助を喜ばせたのであった。
(俺も博奕をやってみようかな)
そんなことを思ってそう思ったことを、こっそり乾児へ云ったことがあった。
「親分に堅く云われて居る
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