んで、杉さんに張らせちゃアならねえって」
こう云って乾児達は相手にしなかった。
これだけが浪之助には心外であった。
とうと浪之助は我慢しきれず、一度でいいから賭場を見せてくれと、今日林蔵へ押して頼んだ。
「仕方がないねえ」と云いながらも、断わりきれず浪之助を連れて、林蔵は自分の賭場の一つ、広谷ヶ原へ出かけて行き、今はそれの帰りなのであった。
三人は野良路を歩いて行く。
「親分これからどうなさいます?」
乾児の藤作が声をかけた。
「杉さんにもつきあって[#「つきあって」に傍点]貰って、山城屋へ行って遊ぶとしようぜ」
「そう来なくちゃアならねえところさ。第一お山《やま》さんが大喜びだ」
3
上尾宿一番の遊女屋山城屋、その前までやって来たが、見れば表が閉ざされていた。
それでいて屋内からは賑かな、男女の声が聞こえてきた。
「親分どうも変ですねえ、表を閉じて遊ぶなんて、まず余っ程の大尽でなけりゃア、当今やるこっちゃありませんぜ」
藤作はいくらかムカッ腹で云った。
「そうさ、こいつ[#「こいつ」に傍点]アちょっと変だ」
林蔵もいくらか怪訝そうに云った。
「戸をどやしつけてみま
前へ
次へ
全343ページ中64ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング