井上嘉門の領地内で、一騒動を起こしたが、自分も負傷して不具となった。左の片足を傷つけたのである。
 福島へ出、名古屋へ出た。
 生活の道がなかったので、とうとう乞食にまでおちぶれてしまった。
 乞食仲間を煽動し、今宵逸見家を襲ったのは、金銭を得ようためだったのである。さて逸見家へ乱入して見れば昔の情婦で自分を裏切ったお妻が、意外にも姿を現わした。
「おのれ!」とばかり引っとらえたのである。
 と、そこへ駈け込んで来たのが、嘉門とそうして多四郎とであった。
「陣十郎オーッ」
「あッ、逸見先生!」
 陣十郎は仰天し、片手でお妻を小脇に抱くと、撞木杖を飛ばして走り出した。
「待て! 陣十郎オーッ」と追う多四郎を、乞食どもは遮った。
「邪魔するか汝《おのれ》!」と怒った多四郎が、刀を抜いた瞬間に、乞食を背後から斬り仆す者があった。
 それは秋山要介であった。
「や、貴殿は秋山氏!」
「おおこれは逸見先生で」
「秋山氏には、どうしてここへ?」
「乞食ども怪しい片輪武士と、ともどもこの屋敷へ潜入いたしましたを、つけて参って拙者見届け、押込みと推し、ご注意いたそうと、拙者も潜入いたした次第で」
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