討ち果したところで自慢にもならず、もし反対に討たれでもしたら――相手は随分強そうであるから、――討たれでもしたら恥辱の恥辱である。
 で黙っているのであった。
 この時要介はヒョイと立った。
 そうして部屋を出て行った。

 満月の光を浴びながら、秋山要介は大曾根の方へ、静かな足どりで歩いて行った。
 まだこの辺りは屋敷町で、昼もひっそりとしたところなのであるが、更けた夜の今はいよいよ寂しく歩く人の足音もなく、歩く人の姿もなかった。

疑い合う兄妹


 この夜大曾根の農家の一間に、兄妹の者が話していた。
 主水《もんど》とそうして澄江《すみえ》とであった。
 馬大尽井上嘉門の領地の、あの生地獄へ落された澄江が、どうしてこんな所に来ているかというに、あの夜暴民たちはその生地獄の上の、断崖へ押しよせて行き、生地獄にいる人々を助けようとして、幾筋となく綱を下ろした。
 それへ縋って地獄の人々は、あの谷から引き揚げられた。
 その中に澄江もいたのであった。
 そうして暴動の人渦に雑って、嘉門の領地をさまよっているうちに、幸運にも義兄の主水と逢った。
 その時の二人の喜びは!
 互いの過去を
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