こうに一団、こっちに一団、露路に一団、空地に一団、林の中に一組、森の中に一組、到る所に集まって、議論し撲り合いし取っ組み合いした。
 どうして、誰が、何のために、どういう騒動を起こしたのか、そういう真相を確かめようともせず、漠然とした恐怖、漠然とした憤怒、漠然とした焦燥に狩り立てられ、同派は組んで異端を襲い、同党は一致して異党を攻め、罵り、要求し、喧騒し合った。
「生地獄の人達を救い出せ!」
「ワ――ッ」と数十人が鬨の声をあげて、山の手の方へ押して行った。
「嘉門様にこの地から出て貰おう!」
「ワ――ッ」と数十人が屋敷を目掛け、無二無三に走って行った。
「人使いが荒すぎる」
「役にも立たないお客さんなどを、泊めて置くのが間違っている!」
「客人たちを追っ払え!」
「ワ――ッ」と大勢が一つに集まり、その客人の泊まっている家々へ、押し寄せて行って騒ぎ立てた。
 悲鳴! 呻き声! 泣き声! 怒声!
 客人達も狼狽して、家々を出て群集にまじった。
 秋山要介も浪之助も、源女も主水もその中にいた。
 嘉門も狼狽し恐怖したらしい。
 玄関に立って途方にくれていた。
 そこへ多四郎が現われた。
「逸
前へ 次へ
全343ページ中304ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング