見《へんみ》様何といたしましょう?」
「とり静める方法ござりますかな?」
「さあこう人心が亢《たかぶ》っていましては……」
「一時避けたがようござろう?」
 お妻や東馬も怯えたように、その側《そば》に立って震えていた。
 竹法螺が鳴り陣鐘が鳴り、やがて鉄砲の音さえした。
 閉ざされた大門が破られそうになった。

 嘉門と多四郎とお妻と東馬、四人を乗せた駕籠を守り、十数人の嘉門の家の子郎党が、騒乱の領内から裏山づたいに、福島の方へ走り出したのは、それから間もなくのことであった。

 その翌日の午後となった。
 林蔵の乾兒《こぶん》藤作は、フラリと自分の賭場を出て、猪之松の賭場の方へ足を向けた。
 猪之松の賭場は上ノ段にあって、この夜客人で一杯であった。


 藤作は酔っていた。
 そうして彼は上尾街道で、澄江を危難から救おうとした時、猪之松の乾兒の八五郎たちのために、叩きのめされたことを忘れなかった。
 いつか怨みを返してやろう――こういうことを考えていた。
 さて福島へやって来た。
 猪之松一家が上ノ段で、盛大に賭場をひらいていた。
「諸国の立派なお貸元衆が、ここには集まっているのだ
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