や岩の裾に、灰白く散乱しているのが見えた。
 と、行手に月光に照らされ、丘のような物形が見えた。
 やはりそれは丘であった。
 岩と土と苔と權木、そんなもので出来ている小丘であって、人間の身長《たけ》の二倍ほどの間口と、長い奥行とを持っていた。
 そこの前まで辿りついた時、丘の正面の入口から――つまりその丘が岩窟なのであり、正面に入口が出来ているのであったが、その入口から骸骨の群が――骸骨のような痩せた男や女、老人や老婆、男の子や女の子が、ムクムクと泡のように現われ出た。
 そうして口々に喚き出した。
「また客が来た」
「俺らの仲間か」
「何か食物を持って来たかしら?」
「着物を剥げ! ひっぺがしてしまえ!」
「若い女だ」
「奇麗な女だ」
「すぐ汚くなるだろう」
「ナーニ半月は経たねえうちに首をくくってくたばるだろう」
 すると片眼の老人が、叱るように大声をあげた。
「うるせえ、野郎共、しずかにしろ! ……今度のお客さんはこれ迄のとは、どうやら少オし違うようだ。身体へさわっちゃア不可《いけ》ねえぞ!」


 片眼の老人は権威者と見える。彼らの仲間の権威者と見える。そう一言云っただけで
前へ 次へ
全343ページ中292ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング