澄江は地上へ振り落とされた。
馬と前後して谷の斜面を、底へ向かって転落した。
何と奇怪にも谷の斜面が、柔らかくて滑らかで、ほとんど土とは思われないではないか!
こうして澄江は微傷《びしょう》さえ負わず、谷の底へ落ちついた。
と、眼の前を落ちて来る馬の、気の毒な姿が通って行ったが、底へ着くと立ち上り、立ち上ったが恐怖のためであろう、高い嘶をあげながら、前方へ向かって走りつづけた。
月光をうけて銀箔のように輝いて見える川があった。
そう、前方に川があった。
と、その川まで駈けて行った。
馬は川へ飛び込んだ。(泳ぐかな?)
と澄江は思った。
浅いと見えて五歩十歩、二十歩あまり歩いて行った。
と、どうだろう歩くに従い、馬は次第に小さくなって行った。
そうしてやがて歩かなくなった。
身長《せい》が大変低くなって見えた。
と、馬は首を長く延ばし、悲劇を無言で眺めている月に向かって顔を向けたが、悲しそうに幾度か嘶いた。
だんだん身長が低くなって行く。
やがてとうとう馬の姿が川の面から消えてしまい、漣《さざなみ》も立てずにどんより[#「どんより」に傍点]と、流れるともな
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