木陰にかくれて見送っている、その要介たちの横を通って、その一団の去った後は、四辺《あたり》寂々寥々としてしまった。
と、要介は浪之助へ云った。
「とうとう犠牲者を助け損なったが、これも運命仕方がない。……が、それは仕方ないとして、生地獄の光景を見ようではないか」
「それがよろしゅうございます」
「源女殿もおいでなされ」
「妾は厭でござります」
恐ろしかった過去のことを、その場へ臨むことによって、ふたたび強く思い出すことを、恐れるという心持から、そう源女は震えながら云った。
「さようか、では源女殿には、そこにてお待ちなさるがよろしい」
云いすてて要介は浪之助ともども、谷の下口へ足を向けた。
と、先刻現われて、権九郎達の赤提燈に対し、応えるように振られたところの、例の幾個かの赤提燈が、見れば谷の下口の辺りに、建てられてある番小屋らしいものの、その中から又現われて来た。
「誰だ、これ、近寄ってはならぬ! 近寄ると用捨なく撃ち取るぞ!」
赤提燈の中から声が来た。
鉄砲を向けている姿が見えた。
2
馬が斜面を駈け下る間に、くくられていた綱が[#「綱が」は底本では「網が」]切れ、
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