、ゾッとするような云いぶりなのであった。
「では私今日只今、どんなことをやろうと思っているかというに、澄江様とやらいうお前さまを、よう納得させた上で、私の心に従わせる! ……ということでござりますじゃ」
云って嘉門は肩にかかっている、その長髪をユサリと振り、ベロリと垂れている象のような眼を、カッと見開いて澄江を見詰めた。
澄江はハ――ッと息を飲んだ。
その澄江はもう先刻《さっき》から、観念と覚悟とをしているのであった。
思えば数奇の自分ではある! ……そう思われてならなかった。
上尾街道で親の敵《かたき》と逢った。討って取ろうとしたところ、博労や博徒に誘拐《かどわか》された。そのあげく[#「あげく」に傍点]に馬飼の長の、人身御供に上げられようとした。と敵に助けられた。親の敵の陣十郎に! ……これだけでも何という、数奇的の事件であろう。しかもその上その親の敵に、親切丁寧にあつかわれ、同棲し旅へまで出た。夫婦ならぬ夫婦ぐらし! 数奇でなくて何であろう。
追分宿のあの騒動!
義兄《あに》であり恋人であり、許婚《いいなずけ》である主水様に、瞬間逢い瞬間別れた!
数奇でなくて何で
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