あろう!
 と、嘉門にとらえられた。
 そうして今はこの有様だ!
 いよいよ数奇と云わざるを得ない。
(どうなとなれ、どうなろうとまま[#「まま」に傍点]よ)
 観念せざるを得ないではないか。
(が、この厭らしい馬飼の長に躰を穢される時節が来たら、舌噛み切って妾は死ぬ!)
 こう決心をしているのであった。
 そうしっかり決心している彼女は、外見《よそめ》には蝦蟇に狙われている、胡蝶さながらに憐れに不憫に、むごたらしくさえ見えるけれど、心境は澄み切り安心立命、すがすがしくさえあるのであった。
 短い沈黙が二人の間にあった。
「いかがでござりますな。澄江様」
 嘉門はネットリとやり出した。
「この老人の可哀そうな望み、かなえさせては下さりませぬかな。……いやもうこういう老人になると若い奇麗なご婦人などには、金輪際モテませぬ。そこで下等ではござりまするが、金の力で自由《まま》にします。……お見受けしたところ貴女《あなた》様は、武家の立派なお嬢様で、なかなかもちまして私などの、妾《めかけ》てかけ[#「てかけ」に傍点]になるような、そんなお方では決してない、ということは解《わか》っていますじゃ。
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