とは未だ逢わなかった。退屈なので夜の庭の、様子でも見ようとしてお妻をつれて、ブラリと出て来た多四郎であった。
それが偶然こんなことから、日頃破ろうと苦心していた、「逆ノ車」の悪剣を易々と破ることが出来たのである。
そのコツ法を知ったのである。
(よい事をした、儲け物だった)
そう思わざるを得なかった。
嘉門が奥の豪奢な部屋で、澄江を前にしネチネチした口調で、この夜この時話していた。
「不思議なご縁と申そうか、変わったご見と申そうか、高萩でお逢いしたお前さまと、追分宿でまたお逢いし、とうとう私の部屋まで参られ、こうゆっくりとお話が出来る、妙なものでござりますな」
ネチリネチリと云うのであった。
古法眼《こほうがん》の描いた虎溪三笑、その素晴らしい六枚折りの屏風が無造作に部屋の片隅に、立てられてある一事をもってしても、部屋の豪奢が知れようではないか。
座には熊の皮が敷きつめられてあり、襖の取手の象嵌などは黄金と青貝とで出来ていた。
「それにいたしましても高萩では、とんだ無礼いたしましたのう。ハッ、ハッ、とんだ無礼を! ……が、あいつは正直のところ、私の本意ではなかったので。
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