と、二人のその武士達は、土塀の前の一所へ立って、しばらく何やら囁いていたが、やがて土塀へ手をかけると、ヒラリと内へ躍り込んだ。
「おや」
「はてな」
 と云い要介も、浪之助も声をあげた。
「先生、あいつら変ですねえ」
「客ではなくて泥棒かな」
 二人は顔を見合わせた。
 と、先刻から物も云わず、熱心に四辺《あたり》を見廻したり、深く物思いに沈んだりして、様子を変えていたお組の源女が、この時物にでも憑かれたような声で、
「おお妾《わたし》は思い出した。この屋敷に相違ない! 妾が以前《まえかた》送られて来て、酒顛童子のようなお爺さんに、恐ろしい目に逢わされた屋敷! それはここだ、この屋敷だ! ……この屋敷だとするとあの[#「あの」に傍点]地獄は――地獄のように恐ろしく、地獄のようにむごたら[#「むごたら」に傍点]しく、……※[#歌記号、1−3−28]まぐさの山や底無しの、川の中地の岩窟《いわむろ》の……その地獄、その地獄は、どちらの方角だったかしら? ……もう解《わか》る! 直ぐ解る! ……でもまだ解らない、解らない! ……そこへ妾はやられたんだ! そこで妾は気絶したんだ! ……」
 云い
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