避けているからである。

 木曽福島へやって来たものの、逸見多四郎は馬市そのものに、何の関心も執着もなく、執着するところは埋ずもれた巨宝、それを手に入れることであった。
「お妻殿」と旅籠の座敷で多四郎は優しく微笑して云った。
「木曽の奥地西野郷へ、行って見ようではござらぬか」
「はいはいお供いたしますとも」
 お妻は嬉しそうにそう云った。
「其方《そなた》は健気で話が面白い。同行すると愉快でござろうよ」
「まあ殿様、お世辞のよいこと」
「東馬、其方《そち》も行くのだぞ」
「は、お供いたします」
 こんな塩梅《あんばい》に二人を連れて、多四郎は福島の宿を立った。
 奥地の木曽の風景を探る。こう二人には云ったものの、その実は奥地の西野郷に、馬大尽事井上嘉門がいる。そこに巨宝があるかもしれない。有ったらそれを手に入れてと、それを目的に行くのであった。
 木曽川を渡ると渡った裾から、もう険しい山路であった。
 急ぐ必要の無い旅だったので、三人は悠々と辿って行った。

馬大尽の屋敷


 その同じ日のことであった、旅籠《はたご》尾張屋の奥の部屋で、秋山要介が源女と浪之助とへ、
「さあ出立だ。い
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