主水は思った。
が、直ぐに思い出されたことは、陣十郎が以前から、澄江を恋していたことであった。
(いまだに恋しているのかな)
こう思うと不快な気持がした。
それと同時に陣十郎の情婦? お妻のことが思い出された。
卒然として口へ出してしまった。
「お妻殿はどうして居られることやら」
「ナニお妻?」と驚いたように、陣十郎は主水を見詰めた。
6
「お妻! ふふん、悪婆毒婦! あんな女も少ないよ」
やがて陣十郎は吐き出すように云った。
追分宿の夜の草原で、後口の悪い邂逅をした。――そのことを思い出したためであった。
「そうかなア」と主水は云ったが主水にはそう思われなかった。
彼女の執拗なネバネバした恋慕、どこまでも自分に尽くしてくれた好意――一緒にいる中は迷惑にも、あさましいものにも思われたが、さてこうして離れて見れば、なつかしく恋しく思われるのであった。
(が、そのお妻とこの俺とが、夫婦ならぬ夫婦ぐらし、一緒に住んでいたと知ったら、陣十郎は何と思うであろう?)
夫婦のまじわり[#「まじわり」に傍点]をしなかったといかに弁解したところで、若い女と若い男とが、一緒に住んでいたの
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