らしい。
が、その陣十郎はどうしたものか、詳しく話そうとはしないので、強いて訊くことも出来なかった。
とはいえ澄江がそんな事情で、嘉門に連れられて行ったとすれば、急いで木曽へ出張って行って、澄江を奪い返さなければならない。
――で、旅立って来たのである。
二人は翌日山形屋を立って、旅駕籠に身を乗せて、福島さして歩ませた。
鳥居峠へ差しかかった。
ここは有名な古戦場で、かつ風景絶佳の地で、芭蕉翁なども句に詠んでいる。
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雲雀《ひばり》より上に休らう峠かな
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木曽の五木と称されている、杜松《ねず》や扁柏《ひのき》や金松《かさやまき》[#ルビの「かさやまき」はママ]や、花柏《さわら》や、そうして羅漢松《おすとのろう》[#ルビの「おすとのろう」はママ]などが、鬱々蒼々と繁ってい、昼なお暗いところもあれば、カラッと開けて急に眼の下へ、耕地が見えるというような、そういう明るいところもあった。
随分急の上りなので、雲助はしきりに汗を拭いた。
主水は陣十郎の容態を案じた。
(窮屈の駕籠でこんな所を越して、にわかに悪くならなければよいが)
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