た。
 で、介抱さえしてやることにした。
 旅籠へ連れて来て医師にかけた。
 それにしてもどうしてそんな負傷者を連れて、福島などへ行くのであろう?
 こう陣十郎が云ったからである。
「井上嘉門という馬大尽が、博徒猪之松の群にまじり、あの夜乱闘の中にいた。そこへ澄江殿が逃げ込まれた。と、嘉門が駕籠に乗せ、福島の方へ走らせて行った。その以前からあの嘉門め、澄江殿に執着していた。急いで行って取り返さずば、悔いても及ばぬことになろう。……これにはいろいろ複雑の訳と、云うに云われぬ事情とがある。そうして俺はある理由によって、その訳を知っている。が今は云いにくい。ただ俺を信じてくれ。俺の言葉を信じてくれ。そうして一緒に木曽へ行って、澄江殿を取り返そう」
 ――で、二人は旅立ったのであった。
 主水にしてからが澄江の姿を、追分の宿で見かけたことを、不思議なことに思っていた。馬大尽井上嘉門のことは、上尾宿の旅籠の番頭から聞いた。
 しかし、澄江と嘉門との関係――何故嘉門が駕籠に乗せて、澄江をさらって行ったかについては、窺い知ることが出来なかった。
 陣十郎は知っているらしい。
 詳しい事情を知っている
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