に堪えかね、空地へ耕地へ……耕地へ耕地へと、さながら怒濤の崩れる如く、百、二百、三百、四百! 老幼男女家畜までが、この耕地へ逃げ出して来た。
その人波に揉まれ揉まれて、澄江とお妻とが泳いで来た。
と、陰惨とした幽鬼の声で、
「澄江殿オ――、お待ちなされ! ……汝お妻ア――遁そうや!」と叫ぶ、陣十郎の声がした。
9
澄江もお妻も振り返って見た。
愛欲の鬼、妄執の餓鬼、殺人鬼、――鬼となった陣十郎が人波を分けて、二人の方へ走って来た。
血刀が群集の波の上に、火光《ひかり》を受けて輝いている。
(陣十郎に捕らえられたら、妾《わたし》の命は助からない)
お妻は夢中で悲鳴を上げて走り、
(陣十郎殿に捕らえられたら、妾の躰も貞操も……)
こう思って澄江も無我夢中で、前へ前へとヒタ走った。
「どうぞお助け下さりませ!」
無我夢中で走って来た澄江、一挺の駕籠のあるのを見かけて、そこへ駈け付けこう叫んだ。
「お助けいたす! 駕籠の中へ!」
誰とも知らず叫んだ者があった。
「お礼は後に、事情も後に!」
こう云って澄江は駕籠の中へ、窮鳥のように身を忍ばせた。
「駕籠やれ!」と又も誰とも
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