ゃ。……ともかくも身仕度してこの部屋へ!」
 間もなく厳重に身拵《みごしら》えした、東馬と源女とが入って来た。
 その間に多四郎も身拵えし、三人様子をうかがっていた。
 そこへ番頭が顔を出し、
「木曽福島の馬市へ参る、百頭に余る馬の群が、放れて宿へなだれ込み、出火などもいたしましたし、切り合いなどもいたし居ります様子、大騒動起こして居りますれば、ご用心あそばして下されますよう」
 こう云ってあわただしく走って行った。
「何はあれ宿の様子を見よう」
 多四郎は源女と東馬とを連れて、油屋の玄関から門口へ出た。
 多四郎がこの地へやって来た理由は?
 源女の歌う歌の中に、今は変わって千の馬、五百の馬の馬飼の、云々という文句があった。そこで多四郎は考えた。そういう馬飼の居る所に、黄金は埋められているのであろう、そうしてそういう馬飼の居る地は、木曽以外にはありそうもない。木曽山中には井上嘉門という、日本的に有名な馬飼があって、馬大尽とさえ呼ばれている。そやつが蔵しているのではあるまいか? おおそうそう馬大尽といえば、門弟高萩の猪之松方に、逗留しているということじゃ、源女殿と引き合わせ、二人の様子
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