馬! 馬!
博労! 博労! 博労!
戸を蹴破り、露路に駈け込み、騒ぎに驚いて戸を開けた隙から、駈け入る馬! 捕らえようとして、無二無三に踏み入る博労!
ボ――ッと一軒から火の手が揚がった。
火事だ!
とうとう火を出したのだ!
おりから吹きつのった夜風に煽られ、飛火したらしいもう一軒から、カ――ッと火の手が空へあがった。
「起きろ!」
「火事だ!」
「焼き討ちだ!」
家々はおおよそ雨戸を開け、人々は争って外へ出た。
岩屋では主水が眼を覚まし、鍵屋では澄江が起き上った。
番頭が階上階下《うえした》を怒鳴り廻っている。
「お客様方大変でございます。焼き討ちがはじまりましてござります! どうぞお仕度下さりませ! ご用心なすって下さりませ!」
本陣油屋の奥の座敷では、逸見《へんみ》多四郎義利が、眼をさまして起き上った。
3
多四郎は聞き耳を澄ましたが、
「源女殿! 東馬々々!」と呼んだ。
と、左の隣部屋から、
「はい」という源女の声が聞こえ、
「眼覚め居りますでござります」という、門弟東馬の応える声が、右の隣部屋から聞こえてきた。
「宿《しゅく》に騒動が起こったようじ
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