しくも憐れにも思われて、断行することが出来なかった。
(夜の風にでも吹かれて来よう)
で、こっそりと宿を抜け出したのである。
9
足にまつわる露の草を、踏分け踏分け陣十郎は歩いた。
街道を馬の列が通って行く。
それを避けて草野を歩いて行くのである。
(ガーッとどいつかを叩っ切ったら、この心も少しはおちつくかもしれない)
そんなこともふと思われた。
(ウロウロ女でも通って見ろ)
そんな兇暴の考えも、チラチラ彼の心の中に燃えた。
と、そういう彼の希望に、応じようがために出て来たかのように、行手から女が星の光で知れる、小粋の姿を取り乱し、走ったり止まったりよろけ[#「よろけ」に傍点]たりして、こっちへ歩いて来るのが見られた。
(しめた!)と一刹那陣十郎は思った。
(宿の女か、旅の者か、そんなことはどうでもいい、来かかったのが女の不運! ……)
で、素早く木陰に隠れた。
その女はそれとも知らぬか、よろめくような足どりで、その前を通って行き過ぎようとした。
不意に躍り出た陣十郎、物をも云わず背後《うしろ》の方から……
「あッ」
不意の事だったので、女は驚きの声をあげたが、
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