米とはそりゃ情ない、美濃や尾張の涙米
[#ここで字下げ終わり]
などと唄う馬子唄の声が、ノンビリとして聞こえてきた。
しかしお妻にはそういう光景も、珍らしくもなければ美しくもなかった。でただ夢中で歩いていた。
陣十郎が同じような心境の下に、旅籠を出て野の方へやって来たのは、ちょうどこの頃のことであった。
主水のことを思っている澄江! それを口へ出して云った澄江! そういう澄江を夕方見た。汝々どうしてくれよう! すんでにその時陣十郎は、澄江を一刀に切ろうとした。
が、それは辛うじて抑えた。
さて夜になって二人は寝た。
部屋の片隅に澄江が寝、別の片隅に陣十郎が寝。――これまでやって来たように、その夜もそうやって二人は寝た。
が、陣十郎は眠られなかった。
怒り、失望、嫉妬の感情が、心を亢《たか》ぶらせ頭を燃やし、安眠させようとしないのである。
見れば澄江も眠られないと見えて、そうして恐怖に襲われていると見えて、こっちへ細い頸足《うなじ》を見せ深々と夜具にくるまったまま、溜息を吐いたり顫えたりして、夜具の中で蠢いていた。
(一思いに……)
この考えが又浮かんだが、あさま
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