して三の目へ張り、
「壺!」と怒鳴っているのであった。
 客人たちは囁《ささや》き出した。
「お侍さんだけに度胸があるねえ」
「今度三が出たらどうなると思う」
「胴親が、四倍の、五百両を附けるまでよ」
「元金《もときん》を加えて、六百二十五両になるってわけか」
「それじゃア、五百両胴は潰れるじゃアねえか」
 染八という乾児《こぶん》が中盆をしていたが、途方にくれたように、五郎蔵の顔を見た。と、この時まで、小面憎そうに、勝ち誇っている浪人を、睨《にら》み付けていたお浦が、
「親分」と例の五郎蔵へ囁いた。
「喜代三を引っ込めなさいよ」
 喜代三というのは、壺振りの名であった。
「喜代三にゃア、三が振り切れそうもないじゃアありませんか」
「大丈夫だ」
 五郎蔵の声は自信に充ちていた。
「天国《あまくに》様が附いている」
 それから神棚の方へ頤をしゃくったが、「五郎蔵の賭場、一度の疵《きず》も附いたことのねえのは、天国様が附いているからよ。喜代三、勝負しろ」
(天国様?)
 と、五郎蔵の言葉《ことば》を小耳に挾んで、不審を打ったのは、頼母で、
(それじゃアあの神棚には、天国の剣が祭ってあるのか
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