ど》させた。彼はお浦を嬲《なぶ》り殺しにしようとした。
典膳に至っては、五郎蔵の過去の行状を知っていて、強請《ゆす》りに来たほどの男だったので、生きているからには殺さなければならず、これも嬲り殺しにすることにした。
こうして惨酷の所業が今日まで行われて来たのであったが、府中《しゅく》で殺しては人目につき、後々がうるさいというところから、この農家の納屋で、乾児たちに吩咐《いいつ》け、その嬲り殺しの最後の仕上げに取りかからせたのであった。
突然風を切って木刀が、頼母の眉間へ飛んで来たので、頼母は瞬間身を反《か》わした。
「面倒くさい! 方々、たたんでおしまいなされ!」
叫んで刀を抜いたのは、木刀を投げつけた角右衛門であった。
「そうだ、やれ!」
「膾《なます》に刻め!」
怒号する声が一斉に湧き起こり、納屋が鳴釜《なりかま》のように反響した。無数の氷柱《つらら》が散乱するように見えたのは、乾児たちが脇差しを引っこ抜いたからであった。
やにわに一人の乾児が横撲りに斬り込んで来た。頼母は、右手の壁の方へ身をかわしたが、抜き打ちざまに、眉間から鼻柱まで割り付けた。
「やりゃアがったな!」
と喚くと、もう一人の乾児が、むこうみずにも、脇差しを水平にし、体もろとも、突っ込んで来た。それを頼母は左へ反わし、乾児が、脇差しを壁へ突っ込んだところを、背後から、肩を背筋まで斬り下げた。
二人を助けて
と、間髪を入れず、三人目の乾児が、
「野郎!」と叫んで、足を薙ぎに飛び込んで来た。
「命知らずめ!」
と頼母が叫んだ時には、もうその乾児の脳天を、鼻柱まで斬り下げ、その隙を狙って紋太郎が、脱兎のように戸口を目がけて逃げだしたのを、追おうともしないで見捨て、昏迷《あが》った四人目の乾児が、
「チ、畜生オーッ」
と悲鳴のような声をあげて、滅茶滅茶に脇差しを振り廻し、ヒョロヒョロと接近《ちかよ》って来るやつを、真正面から、肩を胸まで斬り割り、望月角右衛門が、
「拙者、頼母めを背後より……各※[#二の字点、1−2−22]《おのおの》方は正面から……」
と叫び、刀を振り冠り、背後へ廻ると見せかけ、その実は、お浦と典膳とが釣り下がっているその足の下を潜り、戸口から飛び出したのをも見捨て、生き残った二人の乾児が、これも戸口から駈け出そうとするのを、素早く前へ立って遮《さえぎ
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