にお入りなさりませ。ご自身に寝部屋へ参られませ」
 すぐにカチカチと音がした。どうやら錠でもあけるらしい。
「有難い有難い礼を云うぞ。そうしたら俺はお紅を連れ出し、遠く他国へ行くことにしよう。そうしてそこで一緒に住む」
 やがてギーという音がした。
 と、扉が一方へあいて、先刻《さっき》方お紅の部屋に在って、お紅に因果を含めていた、老婆が顔をつき出した。すなわち四塚の姥である。
「お入りなされ」
「もう占《し》めたぞ!」
 だがその時どうしたのであろうか、四塚の姥は、
「あッ」と云ったが、ビ――ンと扉をとじてしまった。
 主殿《おもや》とつながれている廻廊を、一つの人影が辷るように、こっちに近寄って来たからである。
「小四郎!」
「おッ、ご宿老様!」
「不忠者!」
 か――ッと一太刀!
 悲鳴が起こって骸が斃れた。
 幸蔵主《こうぞうす》が樓上で耳にしたのは、この小四郎の悲鳴なのであった。
「四塚の姥! 扉をあけろ。……うむ、開けたか、顔を出せ。……お紅という娘が居るはずだ。丁寧にあつかって連れて参れ」
「かしこまりましてござります」
 密房の扉があけられている。
 砂金色の燈火《とも
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