血ぬられた懐刀
国枝史郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)某《それがし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)万事|四辺《あたり》は
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+(虍/且)」、第4水準2−15−45]《しどみ》の花
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別るる恋
「相手の権勢に酔わされたか! ないしは美貌に魅せられたか! よくも某《それがし》を欺むかれたな!」
こう罵ったのは若い武士で、その名を北畠秋安《きたばたけあきやす》と云って、年は二十三であった。
罵られているのは若い娘で、名は萩野《はぎの》、十九歳であった。
罵られても萩野は黙っている。口を固く結んでいる。そうして足許を見詰めている。その態度には憎々しいほどの、決心の相が見えている。
「さようか、さようか、物を言わぬ気か、それ程までに某を、もう嫌って居られるのか。薄情もそこまで行き詰めれば、また潔いものがある。で、某も潔くやろう。二人の仲は今日限りに、あか[#「あか」に傍点]の他
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