。……そんなにも綺麗なお紅なのだ。俺だって恋しく思うではないか。頼む、あけてくれ、扉をあけてくれ!」
更にそれから誘惑するように。
「が、勿論頼むには、頼むだけのことはするつもりだ……殿下から拝領の生絹をやろう、殿下から拝領の羅紗布をやろう、殿下から拝領の紋唐革をやろう。もしお前が欲しいというなら、刺繍した黒|天鵞※[#「糸+戊」、515−下−18]《ビロード》をくれてやる。黄金をやろう、背負いきれないほどの黄金を!」
どうやら最後のこの言葉は、四塚の姥をまどわした[#「まどわした」に傍点]らしい。
しばらくの間は黙っていたが、諂うように声をかけた。
「黄金を下さると有仰るので?」
「やるよやるよ、背負いきれないほどやるよ」
「まあまあ左様でござりますか、考えることにいたしましょう。妾はすっかり老い枯ちて居ります。この女部屋の宰領役さえ、わずらわしいものになりました。どうぞ閑静な土地へ参って、安楽なくらし[#「くらし」に傍点]をいたしたいもので。それにはお宝が入用《い》りますので。……貴郎《あなた》様がそれを下さるという。有難いことでござりますよ。ではこの扉をあけましょう。ご自身
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