らしく高貴になった。
「貴女様は一体|何人《どなた》様で?」
 こう云いたいような女になった。
 行くべき所へ行き着いてしまった。私は放蕩に耽るようになった。酒だ! 女だ! 寝泊りだ!
 ある時ある所で三日泊まった。四日目の夕方帰って来た。
 と、貸家札が張られてあった。
「鳥は逃げた!」と私は云った。
「オフェリヤ殿、オフェリヤ殿、尼寺へでもお行きやれ」
 シェイクスピアの白《せりふ》が浮かんできた。
「尼寺なものか、極楽だ! マリア・マグダレナは極楽へ飛んだ」
 私は大声で笑おうとした。が反対に胴顫いがした。
「だが、予定の行動を」
 私は踵を返そうとした。
「お神さんえ、どうぞ一文、よし、俺は乞食になろう!」
「もし」とその時呼ぶ声がした。
 側《そば》に小男が立っていた。
「へえへえ」と私は手を揉んだ。
「旦那様え、何かご用で?」
 乞食の稽古をやり出した。

17[#「17」は縦中横]

「貴郎はここのご主人で?」
 その洋服の紳士は云った。
「へえへえ左様で、昔はね。今は立ん棒でございますよ」
 その紳士は微笑した。
「奥様からのお伝言《ことづけ》で。あるよい家が目つかりま
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