目掛けの第二の計略! うまいぞうまいぞ」と北叟笑《ほくそえ》む。

 こういうことがあって以来、最所家と須々木家とは不和になった。そこを狙って岡郷介は、実父の仇と偽わり怒り、最所治部の悪事を数えて須々木豊前へ焚き付ける。とうとう戦端は開かれた。僅か六月ではあったけれど岡郷介は最所家に仕え、城の要害、兵の強弱、武器の利鈍、兵糧の多寡、そういう事迄探り知っていたので、続々名案を考え出す。須々木豊前がそれを用いる。で、須々木方は戦う毎に勝ち、半年余り寄せ合った果、最所治部は戦没し、龍の口城は陥落《おちい》った。
 須々木豊前は大いに喜び、凱旋するや盛宴を張って、部下の将士を慰ったが、功第一と記されたのは他でもない郷介であった。
 歓喜の中にその日は暮れ、やがて夜となりその夜も明けた。たちまち大事件が持ち上った。城の大将須々木豊前が寝所で殺されているではないか。そうして郷介の姿が見えない。

 数日経ったある夜のこと、矢津の城の奥深い部屋で、浮田直家と郷介とは、愉快そうに話していた。
「郷介、お前は恐ろしい奴だ。ただ弁口の才だけで、最所、須々木の二大名を、物の見事に滅ぼしてしまった。俺は一人の
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