映らない。今や土人は二人の前を足早に奥へ走り抜けようとした。
日本人同士の戦いではない。相手は無作法の土人のことだ。紋太夫はあえて掛け声もかけず、振り冠っていた白刃を、ピューッと一つ振り下ろした。ドンという鈍い音! 土人の首が地へ落ちたのだ。松火の光を貫いて一筋の太い血の迸《ほとばし》りが、四尺余り吹き出したのは、物凄くも壮観である。土人はあたかも枯れ木のようにドンと斃《たお》れて動かなくなった。
十九
斬ると同時に紋太夫は岩の蔭へ身を引いたが、真に素早い行動である。しかしそれにも劣らなかったのは、斃れた土人が手に持っていた人骨製の短槍を、岩の蔭から手を伸ばし、素早く攫《と》ったホーキン氏の動作で、槍を握るとその槍で二番手の土人の胸を突いた。「ワーッ」と云ってぶっ[#「ぶっ」に傍点]仆《たお》れる土人。胸から滾々《こんこん》と流れ出る血で、土がぬかるむ[#「ぬかるむ」に傍点]ほどである。とまたパッと岩の蔭から躍り出たのは紋太夫で、構えも付けず横なぐり[#「なぐり」に傍点]に三番目の土人の肩を斬った。すなわち袈裟掛《けさが》けにぶっ[#「ぶっ」に傍点]放《ぱな》し
前へ
次へ
全113ページ中69ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング