が、土人でもなければ自分の味方でもなく、東洋の武士《もののふ》だということが一層彼を驚かせた。
紋太夫はつと[#「つと」に傍点]進んだ。
「これはどなたか存じませぬが、あぶないところをお助けくだされ何んとお礼を申してよいやら、私事は日本の武士小豆島紋太夫にござります」
こう恭《うやうや》しく云いながら丁寧《ていねい》に腰をかがめたけれど、英国人のホーキン氏にそれが解ろう筈がない。でホーキン氏は当惑してただ黙って立っている。しかし人間の感情は、日本人であれ英国人であれ、大して変わるものではない。で、ホーキン氏は手真似を加え、それで和蘭語《オランダご》や西班牙語《スペインご》や、知っている限りの言葉を雑《まじ》え、
「私は英国の探険家ジョージ・ホーキンと申すもの、お見受けすれば何事か恐ろしい事件の起こられた様子、事情お話しくだされますよう」
ところが、小豆島紋太夫は、かつて長崎の和蘭人《オランダじん》から、久しく和蘭語《オランダご》を学んだことがあって、会話ぐらいには事を欠かなかった。そこで忽ち二人の者は、お互いの遭難を語り合うことが出来た。話し合って見れば同じような境遇、親しくなら
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