天井が彼を殺すべく背まで下がって来たのである。
「もういけねえ」と紋太夫は観念の眼を堅く閉じた。「大日本国の武士《もののふ》が、異国も異国南米の蛮地の、しかも不思議な窟《いわや》の中の日の目を見ない妖怪国で、野蛮人どもの姦計に落ち、釣天井に圧殺されようとは! 無念も無念、残念ではあるが、これも、天命のしからしむるところか。――あ、苦しい! 息詰まるわい!」
 もう一押し押されたなら、紋太夫の体はひとたまりもなく、粉微塵《こなみじん》になろうと思われた。と、その時、彼の寝ている厚い石畳の真下に当たって、コツコツコツコツと音がした。
 こういう危険の場合にも、紋太夫は正気を失わない。「はてな?」と耳を傾むける。
 コツコツコツコツとその音は、次第次第に高くなったが、ザーッと土でも崩れるような騒がしい音が聞こえたとたん、グラグラと、石畳は左右に揺れ、そのままドーンと下へ落ちた。あっ! と思う暇もない、紋太夫の体は宙を飛んで、どっと床下へ落ちたものである。
「ああ助かった!」
 と紋太夫は、思わず歓喜の声を上げ、忙がしく四辺《あたり》を見廻すと、石畳の外れた跡の穴から、仄々《ほのぼの》射し込む
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