かたわ》らに西瓜あり。劈開《へきかい》して未だ食わず。張また指さして盗と為《な》して擒《とら》う。はたしてしかり。ある人その術を叩く。張がいわく、厠に入るに草を用う。これ無頼の小人。その衣冠も必ず盗み来たるもの。古廟に群がり睡るは、夜労して昼疲る。西瓜を劈《つんざ》くはもって蠅を辟《さ》くるなりと」
「なるほど」と紋太夫は呟いた。
「支那の昔の賢人の逸話を書き集めた書物《ほん》と見える。昔の人は利口であった。……老婆の話しの聖典とは恐らくこの書物のことであろう。この書物をさえ手に入れればここに止どまる必要はない」
 紋太夫は立ち上がった。それからツカツカと戸口へ行った。戸には錠が下ろされてある。外から下ろされているのである。見廻すと一つ窓があった。
 彼は窓へ飛んで行った。窓にも錠が下ろされてある。外から下ろされているのである。彼は捕虜《とりこ》にされたのだ。完全に監禁されたのである。
 彼は思わず唸ったが、どうする事も出来なかった。再び寝台へ腰を下ろし、心を静めて考えようとした。その時、石の天井が徐々として下へ下がって来た。
「あっ」と紋太夫は声を上げた。「南無三宝! 計られた! さ
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