出されたのはジョン少年で、二人ながら革紐《かわひも》で縛られている。
「そこの杭《くい》へ縛り附けろ!」
社殿の前の小広い空地に一本の杭が立っていたが、二人はそこへ縛り附けられた。
「さあそろそろやろうじゃないか。血を出せ血を出せ! 肉を削《そ》げ肉を削げ!」
このオンコッコの合図と共に、社殿を廻っていた土人達は、杭の周囲《まわり》へ集まって来た。そうして二人の捕虜の周囲をグルグルグルグル廻り出した。そうして歌を唄い出した。
いよいよ虐殺が始まるのである。
彼らは捕虜を廻りながら、手に持っている槍や刀で捕虜の体を切るのであった。そうしてほとんど一日がかりで嬲《なぶ》り殺しにするのであった。
今や一人の蛮人が、手に持っている両刃の剣で、ホーキン氏の腕を切ろうとした。とその刹那木立ちを通し一筋の征矢《そや》が飛んで来たが、その蛮人の拳に当った。
「あっ」と叫んで持っていた刀を手からポロリと取り落とす。とたんにドッと鬨《とき》の声が林の奥から湧き起こり、朝陽の輝く社殿を目がけ雨のように矢が飛んで来た。それが一本として空矢《あだや》はなく、生死は知らず二十人の土人バタバタと地上へ転《
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