をふん[#「ふん」に傍点]縛り部落近くへ連れて行きピシピシ鞭《むち》で撲《なぐ》ったものさ。するとこっちの思惑通りジョンめ親父の名を呼んだものさ。そこで親父のホーキンめが一人でノコノコやって来た。それをだんだんおびきよせ[#「おびきよせ」に傍点]、以前《まえかた》係蹄《わな》をかけて置いた林の奥まで引っ張り寄せ、そこでうまうま捉えたというものだ! 何んと愚かな敵じゃないか! 何んと利口な俺達じゃないか! ……さあみんな唄ってくれ! 大きな声で唄ってくれ!」
住み慣れた部落を惜し気なく捨てここ社殿へ住居《すまい》を移した千人に余る土人どもは、この酋長の話を聞くと老若男女一斉にワッとばかりに喊声を上げ、社殿の周囲《まわり》を廻り出した。
体には刺青《ほりもの》、手には武器、頭や腰を羽毛で飾った兇猛無残の食人族が、不思議な身振り奇怪な手振りで、踊りつ唄いつ廻り歩く様子は、何んと形容しようもない世にも物凄い光景であったが、しかし間もなくそれ以上の恐ろしい光景が展開された。
「もうよかろう引っ張り出せ!」
オンコッコが叫ぶと同時に社殿の扉が左右に開いて、まず現われたのはホーキン氏、次に引き
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