長オンコッコは熟慮した後、その十平太と逢うことにした。通弁の役はゴーである。
「我らは東邦の君子国、日本という国の軍人でござる」まず十平太はこう云った。
「それには何か証拠がござるかな?」オンコッコも負けてはいない。
「証拠と申して何もないが、東邦人には相違ござらぬ」十平太は昂然《こうぜん》と云う。
「それはそれとして何用あって我らの国へは参られたな?」オンコッコは突っ込んだ。
「交際《まじわり》を修め貿易をなし利益交換を致したいために」
「東邦人に相違なくば、祖先より伝わる数連の謎語と、固くむすぼれた不思議な紐とを、何より先にお解きくだされい。修交貿易はその後のことでござる」
「ははあさようか、よろしゅうござる。一旦船中へ取って返し、御大将《おんたいしょう》に申し上げ、改めて再度参ることに致す」
こう云い残して十平太は湾の方へ帰って行った。ゴーも一緒に従《つ》いて行く。どうやらゴーは土人などより東邦人の方が好きになったらしい。
翌日数十人の東邦人が土人部落へやって来た。小豆島紋太夫と十平太とが部下を従えて来たのである。と、酋長のオンコッコはこれも部落中の土人を従え例の広場へ出張っ
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