ならない。……こういう予言を残してくれた。今、どうやらその連中が船へ乗って来たらしい」
この酋長の言葉を聞くや土人達はにわかに騒ぎ出した。あっちでも議論こっちでも議論。広い空地は土人達の声で海嘯《つなみ》のように騒がしくなった。
「東邦人を追っ払え! 宝を渡してたまるものか!」
「東邦人が利口でもあの謎語《めいご》を解くことは出来まい」
「たとい謎語は解くにしても、あの紐だけは解くことは出来まい」
「とにかく充分用心しよう。少しの間様子を見よう」
最後の議論が勝ちを占めた。しばらく様子を見ることになった。
やがて三日が過ぎ去った。東邦人はやって来ない。と云って五隻の軍船《いくさぶね》が湾から外海へ出ようともしない。現状維持というところだ。
と、事件が持ち上がった。物見をしていた土人のゴーが東邦人に捕らえられたのである。
六
オンコッコは憤慨したが、相手が名におう伝説にある東邦人というところから、どうすることも出来なかった。
こうして、またも数日経った。その時、船から使者が来た。その使者こそは、他ならぬ来島十平太その人であって、案内人はゴーであった。
酋
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