「どんな船だか云って見ろ!」
 悠然と床几《しょうぎ》へ腰かけたままオンコッコ酋長はまず云った。
「不思議な帆船でございます。見たこともないような不思議な船!」
「どんな人間が乗り組んでいたな?」
「それが不思議なのでございます。私達と大変似ております」
「肌の色はどうだ白いかな?」
「いえ、銅色《あかがねいろ》でございます」
「そうか、そうして頭の髪《け》は?」
「それも私達と同じように真っ黒な色をしております」
「なるほど、俺達と同じだな」
 オンコッコは腑に落ちないように、眼を閉《つむ》って考え込んだが、急に飛び上がって叫び出した。
「集まれ集まれ皆《みんな》集まってくれ! 伝説の東邦人がやって来た!」
 そこで再び大会議が例の広場でひらかれた。そうしてオンコッコは岩の上へ突っ立ち、再び雄弁を揮うことになった。
「俺達の先祖はいい先祖だ。立派な国を残してくれた。しかし一方俺達の先祖は悪い予言を残してもくれた。ある日ある時東邦人が、五隻の船に乗り込んでこの国へやって来るだろう。そうして謎語《めいご》を解くであろう。そうして紐を解くであろう。そうしたら国中の財産を東邦人へくれなければ
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