て来た。
「拙者は小豆島紋太夫。東邦人の頭領でござる」
「拙者はオンコッコと申すもの。チブロン島国の酋長でござる」
 こう両軍の大将は物々しげに宣《なの》り合った。
「何か謎語《めいご》がござる由《よし》、拙者必ず解くでござろう」自信あり気に紋太夫は云う。
「しからばこなたへおいでくだされい」
 こう云ってオンコッコは歩き出した。十平太初め部下の者が紋太夫の後から続こうとするのを、オンコッコは手で止めた。そうしてたった[#「たった」に傍点]二人だけで林の中へ分け入った。ただし通弁のゴーだけは従いて行かなければならなかった。
 三人はずんずん進んで行く。
 林の中は薄暗くそしてほとんど道がなかった。しかし豪勇の紋太夫はびく[#「びく」に傍点]ともせず進んで行く。
 行く手に巨岩が立っていた。数行の文字が刻《ほ》り付けられてある。
「これでござる」
 と云いながらオンコッコは足を止め、指で石文字を差し示した。
[#ここから2字下げ]
この地上に一物あり
四脚にして二脚にて、三脚なり
しかして声は一あるのみ
四脚を用いて歩む時、彼の歩行最も遅し。
[#ここで字下げ終わり]
 こういう意味のこ
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