りますね。
使女A (女子を盗み見)若様がお勝ち遊ばして、お嬢様をお貰い遊ばすなら、どんなに若様はお喜びなさるでござりましょう。
使女B どんなにお嬢様もお安心なさるでござりましょう。
使女A 私は何となく、若様がお嬢様をお貰いなさるのではあるまいかと思われます。
使女B 私もそのように思われます。今にあの音楽堂の窓から赤い燈火が点ぜられ、注進の者が馬に鞭打ってこの館の門前まで駆けつけ、勝利者の名を高々にお呼び上げなさる時。
使女B そのお名は若様のお名らしく思われます。(女子は二人の使女の話を黙って聞き居しが、この時使女に向かい)
女子 若様のお相手をする人は、どんな人だか知っておいでかえ。
使女A 若様と音楽の競争をなさる人でござりますか。
女子 今夜若様と競技をなさる、その相手の人を知っておいでかえ。
使女B (Aと顔を見合わせ)昨夜の大変が起こらぬ前までは。
女子 前までは。
使女A 銀の竪琴を持っていた、白髪の老人が、若様のお相手と決まっていたのでござります。
使女B あの大変が起こって、その白髪の老人の行方が解らなくなりましたので、若様のお相手は、誰れに御変更なされたやら、
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