レモンの花の咲く丘へ
国枝史郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)瓦斯《ガス》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)人一倍|憧憬《あこが》れる

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(例)[#ページの左右中央]
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[#ページの左右中央]
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この Exotic の一巻を
三郎兄上に献ず、
兄上は小弟を愛し小弟
を是認し小弟を保護し
たまう一人の人なり。
[#ここで字下げ終わり]
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序に代うるの詩二編


孤独の楽調

三味線の音が秋の都会を流れて行く。
霧と瓦斯《ガス》との青白き光が
Mitily の邦《くに》の悲哀を思わせる
宵。……………………

唄うを聞けや。
艶《つや》もなき中年の女の歌、
節《ふし》は秋の夜の時雨よりも
凋落の情調ぞ。

私の思い出は涙ぐみ
ただ何とはなしに人の情《なさけ》の怨まるる。
その三味線と女の歌の聞こゆる間。

木の葉が瓦斯の光に散っている。

君代さん

さし櫛に月の光が落ちている
君代さん。

冴えた霜夜の
秋の白さ。

涙ぐみつつ露は窓の
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