越せたのよ。私を連れて来たその人がね。私の手を引いて門の前まで来ると、門が自然と両方に開《あ》いて、二人が這入《はい》るとまたしまったのよ。開いた時と閉じた時、重い陰気な音がしてよ。その音を聞いた時、私は心の中で、ああもう二度と私はこの門を出ることが出来ないのだと思ったの。……お姉様あの門は何の門? 両方に刃《は》のついてる長い剣が門をしっかりと守っていてよ。お姉様!
女子 お前さんを連れて来た影の人が、何んとかお前さんに云わなくって。
少年 ええ、ええ、むずかしいことを云ったのよ。……肉体を守る剣の門だって。
女子 肉体を守る剣の門! その人の云う通りですよ。……第二の門もらくに越せたの?
少年 泉の水で守られた第二の門も、第一の門と同じように、影のような人に手を引かれて、らくらくと越したのよ。お姉様あの門は?
女子 あの門はね。情の泉で守られた門。
少年 影のような人もそう云ったのよ。
女子 ヨハナーンや! 第三の門は火の門でしょうね。
少年 赤い火の門よ……。
女子 そして熱い!
少年 ええ、ええ、熱い火の門よ!
女子 それもらくに越したのかい。
少年 自然《ひとりで》に門が開《
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