なったのよ。……毎日毎日私はお姉様のことばかりを思っていたのよ。
女子 それで姉様を此処まで尋ねて来たの?
少年 ええ、ええ、そして、とうとうお姉様と逢われたわ。
女子 (不思議そうに)けれどねぇ、ヨハナーンや、どうしてお前さんはお姉様が此処に居ることを知ったんです。……そしてどうして一人で此処まで来られたの。
少年 (首を振り)いいえ、お姉様、私は一人で来たんじゃないのよ。
女子 (驚き)一人でない?
少年 大きい人と一緒に!
女子 大きい人?
少年 大きい恐い人。
女子 (無音。――やや思いあたれるが如き様子)ああ。
少年 大きい恐い、そして影のような人と一緒に来たのよ。お姉様。
女子 ヨハナーンや。……そしてその人は。……あのお前さんを……。
少年 ええ、ええ、私を引っぱったり押したりして、此処までつれて来たんですわ。前に立ったり背後《うしろ》に立ったりしてね。……私はその人の歩いて行く方へ歩いて行ったの。……押されるまんまに押されて来たのよ。……私はね、心の中で思ったの。……この人が私をお姉様の所へ連れて行くんだとね。ええ、ええ、その人は唯フッと現われたのよ。フッと現われた人だ
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