が、そこの浜辺に待っている。行こう行こう北の浜辺へ。
女子 (再びFなる魔法使いの胸にすがり)行きましょう北の浜辺へ、ああ、ああ、私はほんとにお前の者よ! ああ、ああ、私はお前を長らく待っていた。
Fなる魔法使い (女子を介《かか》え)行こう北の浜辺の、罪の深い歓楽へ。
女子 行きましょう北の浜辺へ、私はお前を待っていた。
Fなる魔法使い 女よ!
女子 Fなる魔法使い! (既に両人接吻せんとする時、小供等の挽歌、手近の罌粟畑に聞こゆ。二人の驚きて同時に顔を上げる。――領主及び従者を真っ先に、白木の柩を守りて騎士、音楽家及び小供等数十人。使女は燭を携え正面の口より場内に入り来る、Fなる魔法使いと女子とは相抱きしまま場の右方に立つ。葬式の行列は左にまがり、室を一周し、やがて白木の柩を中央に置く、人々は四方に並ぶ。人々の位置定まりし時、小供等は柩を巡りて挽歌を歌う。一節終わる毎に騎士、音楽隊は、一時に各自の楽器を鳴らす。――三回目の歌のなかばに領主始めてFなる魔法使いに注目し、驚き怒る)
領主 (声高に)歌を止めろ!
(一同歌を止める)
領主 門を守れ!
(人々は出口入口に立つ)
領主 Fな
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