中を横小路の方へ引張って大通りに出ると、自動車を止めるために手を挙げた。小路では益々いい気になった玄竜の喚き声が続いていた。
五
とうとう天には上れなかったのだ。翌朝彼はやはりいつものように穴部屋の中で、苦しそうに悲鳴を上げると共に目を覚した。誰かに縄で首をしめられる悪夢にとりつかれたのである。体は汗びっしょりだった。何しろ体を動かすのが怖ろしいようで、再び目をつぶり息ばかり激しく喘いだ。本当に首の方は大丈夫なのだろうかとわくわくふるえつつさわってみようとして、手を持って行こうとしたとたんに、何かごついものに手先がふれたのでびっくりした。本当だなと思い、目をつぶったままじっと息をころした。全く祈るような気持になって、今度は憚るようにそうっと反対の方の手を出して用心深そうに首筋の方へ近づけようとした。おや、そうでもないらしいぞと思う矢先に何かが又指先にふれてぎょっとし、そのまま仏像のように固くなった。ものの二三分もしたであろうか、やっとこさ心を落着けて、それは一体何だろうかともう一度つついてみようとした。気のせいか今度は触れたものが少しばかり揺れたようである。何
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