実行しつつある。私はこれを名づけて貧乏神退治の大戦争という。そうしてこの戦争は、今度の世界戦争以上の大戦争で、たとい今日の世界戦争は近くその終わりを告ぐるとするも、それに引き続き諸国において盛んに行なわるべき大戦争だと信じている。
しからば前に述べた小学児童に対する食事公給のほかに、同じ英国においてはなお他にはたしていかなる政策を実行しつつありやというに、そは実に各種の方面にわたり、到底これをここに列挙することあたわざれども(くわしくは大正六年一月発行『国家学会雑誌』第三十一巻第一号に掲載されある小野塚《おのづか》博士の「現代英国の社会政策的傾向」を見られよ)、ただその一例を示さんがために、前には児童のことにつき述べたれば、ここにはさらに老人のことについて一言を費やすであろう。
貧乏なる老人の保護のためには、今日の英国には養老年金条例というものがある。これは一九〇八年五月二十八日に下院に提出され、大多数をもって通過し、上院においては種々の議論ありたれども、ついに同年七月三十日に無事通過し、かくて同年十月一日法律として発布さるるに至りしものである。
私は今くわしくこの法律の規定を述
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