又|空《くう》に非ず、楽無く復《また》憂《うれ》い無し
若[#(シ)]人問[#(ワバ)][#二]此[#(ノ)]六[#(ニ)][#一] 明月浮[#(ブ)][#二]水中[#(ニ)][#一] 若《も》し人此の六に問わば、明月水中に浮かぶ
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で、思えば自分らほどのんきな結構なものは世間にないとひとり言を言うて妙に達観していると、せがれのそばで半ば居眠《いねぶ》りをしていた親乞食がせがれがかように申しますのを聞いて、むっくと起き直り『これせがれ、そんな果報な安楽の身にいったいお前はだれにしてもろうたのか親様《おやさま》の御恩を忘れてはならんぞ』と言うたというお話がござります」
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「はたらけどはたらけどなおわが生活《くらし》楽にならざり、じっと手を見る」という連中が、この講話を聞いてはたして自分らほど果報な者は世にないと思うに至るであろうか、どうか。たとい彼ら自身はそう思うにしても、われわれははたして彼らを目して世に果報な人々とすべきであるか、どうか。それが私の問題とするところである。[#地から1字上げ](九月十九日)
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