列す。試みに例をあげて図表の意味を説明せんに、たとえば、英国の曲線についてみれば、家族数百分の六十五の所は、曲線の高さ約百分の二の所にあり。これ最も貧乏なる者より数えて全体の百分の六十五に当たるだけの人員の者が、全国の富の約百分の二を有するに過ぎざることを示すがごとくである。この図式は米国の統計学者ロレンズ氏 (Dr. Max O. Lorenz) の工案に成るがゆえに、ロレンズ氏の曲線という。
[#ここで図表下部解説文終わり]
[#「一家族の所有せる財産平均額比較図」のキャプション付きの図表(fig18353_05.png)入る]
 今中等の上を略し、最後の最富者の部分を一瞥《いちべつ》するに、人数より言えば全人口のわずかに百分の二に相当するだけのものたるにかかわらず、その所有に属せる富は、英国にあっては全国の富の約七割二分、フランスにあってはその六割強、ドイツにあっては五割九分、米国にあっては五割七分に相当しているのである。貧富懸隔のはなはだしきこと、かくのごとし。ひっきょう英米独仏の諸国が貧乏人の実におびただしきにかかわらず、世界の富国と称せられつつあるは、古今にまれなる驚くべき
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