ならぬのが、今の世の中である。先ほども私は、世界じゅうの人が集まって私を親切にしてくれるとお話ししたが、しかしそれは私が多少ずつなりとも月給をもろうて金を持っているからである。家賃を滞らせば、ただ今の親切な家主も、おそらく遠からず私を追い出すであろう。一文もなくなったら、私は妻子とともに、この広い世界に枕《まくら》を置くべき所も得られぬであろう。私の寝ているうちに、毎朝早くから一日も欠かさずに配達してくれた新聞屋も牛乳屋も、もし私が月末にその代価を払わなくなったら、とてもこれまでのように親切にしてくれぬであろう。げに金のある者にとっては、今の世の中ほど便利しごくのしくみはないが、しかし金のない者にとっては、また今の世の中ほど不便しごくのしくみはあるまい。[#地から1字上げ](十一月十六日)
九の三
今の世の中は、金さえあればもとより便利しごくである。しかし金がなければ不便またこの上なしである。それが今の世のしくみである。それゆえ、一方にはその肉体の健康を維持するに必要なだけの衣食をさえ得ておらぬ者がたくさんいるのに、そんな事にはさらにとんじゃくなく、他方には金持ちの
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