みると、私は私の一生を送るうちに,否きょうの一日《ひとひ》を暮らすにつけても、見も知らぬおおぜいの人々から実に容易ならざるお世話をこうむっているのである。しかしこれは私ばかりではない。私よりももっとよけいの金を持っている者は、広い世間に数限りなくあるが、それらの人々は一生のうち、他人《ひと》のためには一挙手一投足の労を費やすことなくとも、天下の人々は、争うて彼に対しさらにさらに多くの親切を尽くしつつある。そこで金のある人は考える。今の世の中ほど都合よくできているものはない。だれが命令するでもなく計画したのでもないのに、世界じゅうの人が一生懸命になって他人のために働くという今日のしくみは、不思議なほどに巧妙をきわめたもので、とても人知をもって考え出すあたわざるところであると。ここにおいてか、いやしくも現代の経済組織を変更し改造せんとする者ある時は、彼らは期せずしていっせいにかつ猛烈にこれを抑圧する。
しかし気の毒なのは金のない連中である。ことわざに地獄の沙汰《さた》も金次第というごとく、金さえあれば地獄に落つべきものも極楽に往生ができるが、金がなくては極楽にゆくべきものも地獄に落ちねば
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